オーディオドラマ

題名
「天の記憶」(NHK・FM、FMシアター)
放映
1990.2.24(土) 22:00〜23:00

出演

  1. 中尾幸世 [私]
  2. 倉崎青児 [彼]
  3. 藤尾年樹 [吉雄常三]
  4. 谷口徹次 [中年男]
  5. 咲田とばこ [中年女]
  6. 大矢志のぶ [若い女]

津川 泉

演出

角岡正美

スタッフ

  1. 林幸夫 音響効果
  2. 榊原幸雄 技術
  3. 山岸康則 制作
  4. バナナ 音楽

ドラマの感想

とまとさんから戴いた感想です。

『天の記憶』に寄せて
『私』の思考は鉱山の地底・宇宙・地上の出来事・過去の人物の間を逍遥する。
東京(大学の中であろうか?)で働いていても、その生活感はあまり無いように見える。
発せられる言葉も、何所か遠くから・海底あるいは宇宙(そら)から聞こえてくるよう。
『部屋の星座』…『私』の部屋に掛かっている絵。
その絵を観たとき、ただ傾いているだけのように見えたその絵の女性の身体は、
『私』の語りを聞いていると無重力の部屋に居て今にも浮き上がってきそうにも見えてくる。
周りに漂っている紙風船のように…
『私』が夜空を見上げている時に出会う青年・彼が「収集」した日記は、
『私』が何かを待っているように時空をも越えて誰かに読まれるのを
長い間待っていたのかも知れないとふと思う。
(「ジャック・フィニィ」の「Love Letter」のように)
金星食の時、三日月の下端に寄り添っていた星は写真でみると
月がこぼした涙のようにも見えたことを思い出す。
チェレンコフ光の青いひかりは
「ジョバンニ」と「カムパネルラ」が銀河の中へ手を入れた時に発した
ひかりのような色だろうか?
2001年の11月獅子座の方から飛び込んで来た塵が放った青緑色のようだろうか?
わたしたちの細胞の一つ一つが宇宙そのものであるなら、魂は…?
目に見えない宇宙線と共に地球の大気を通り抜け、その身体に細胞に降り注ぐのだろうか…

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『天の記憶』を聴いていて、断片的にこのようなことを考えていました。
妄想と言いましょうか…
この物語を聴いていると「森雅之」さんの漫画が読みたくなり
『耳の散歩』を読み返してしまいました。
前に石膏を解いたことがありますが、慣れないと難しい。
水が多ければ流れてしまい、少なければすぐに固まって削れなくなる。
犬の足跡に流して型をとるなら簡単で面白そうです。
金星食の写真は今は無き「スカイウォッチャー」誌で見たものです。実物も良かったです。


京都おふ会に向けていただいた角岡正美さんからのコメント


「ラジオドラマを聴く会」を遂に立ち上げましたね。
おめでとうございます。
もともとラジオって奴はとってもミニコミな存在ですから、多くのメンバーが集まらなく
ては、なんて参加者数にこだわらずに気楽に考えてみたらどうでしょうか。

条件は只ひとつ、良いスピーカーで聴くこと。良いスピーカーというのは値段の高いス
ピーカーのこと(残念ながら)。音は値段に比例するんです。

第一回作品として『天の記憶』が予定されている由。光栄です。もう15年も昔になりま
すか?作者の津川泉と富山の神岡鉱山にある東大宇宙線研究所へ取材に行ったことをなつ
かしく想い出します。
地下1000米の地下大水槽の所までトロッコでコトコト入って行くのです。
暗い鉱道を20分程乗って、10分歩くと研究室があります。そこに若い学者達が、3人程
つめていてニュートリノの研究をしているのです。
ここは以前たしか銅を掘っていたのですが、すっかり掘りつくして廃山になっていた大き
な穴を使って水をためて研究室にしたのです。

薄暗い照明の下で、巨大水槽の上に立って周囲のゴツゴツした岩壁を見つめていると、私
達の遠い祖先が『私たちはどこから来てどこへ行くのか』とつぶやいた淋しさがふと判る
ような気がいたしました。

観念的なラジオドラマ制作が多かった私は取材をすることは全くと言っていい程無かった
ので、これは非情に稀な経験でした。

最後に、
この時期の私は『耳を澄まさせるドラマ』作りに心をこめておりました。その核となった
のが中尾幸世さんの『声』です。
彼女のファンタジックな『声』が無かったら私のドラマは半分以上、生れ出なかったで
しょう。

それでは一時間、どうぞ耳を澄ませて下さい。

有元利夫 部屋の星座について

有元利夫 「部屋の星座」についてとまとさまからいただいた文章です。 (2001年11月28日)

サイズは65.2×50.0cm


女性…
ベージュの袖の黒い服を着ている。向かって右側斜め下に両腕を出している。(7pの「一人の芝居」のような感じ)優しげな顔も向かって右斜めを向いていて、視線は何所も見ていないような・・・ 髪は黒(表紙の絵に近い)



背景…
36pの「手品師」の感じで、壁の∩の部分の内側が赤色。8個の紙風船(球)は紅白の縞でS字かZの様に体の周りを漂っている。大きさは顔と比較したらテニスボールくらい。床はくすんだ緑色のタイル模様。

全体の色味は45pの「春」が一番近いです。



『部屋の星座』 有元利夫作
とまとさまから画像を送っていただきました。2001.12.13

神岡地下観測所について

光検出器数千本が破損 新聞記事より

光検出器 数千本が破損

東大のニュートリノ施設 観測見通し立たず

 素粒子ニュートリノの質量発見というノーベル賞級の成果を挙げた東京大字笛線研究所のニュートリノ観測施設スーパーカミオカンデ〈岐阜県神岡町)で十二日、光を検出する「光電子増倍菅」約一万一千本のうち半数以上が壊れるという事故が起きた。当""時は装置の修理・保守作業中で、同大が詳しい被害状況や原因を調べている。
 文部科学省によると、光電子増倍菅は一本数十万円と高価で製造も容易でないため、長期間にわたり覿測できない見通しとなった。
 スーパーカミオカンデは地下千bの亜鉛鉱山内に設置された巨大な水タンク。水中に飛び込むニュートリノが水の分子と反応して発生する光を光電子増倍菅でとらえる仕組""みだ。
 同大の発表によると、この日午前十一時ごろ、スーパーカミオカンデのそばにある制御室にいた研究者が地響きと衝撃音を感じた。
 タンク内をテレビカメラなどで調べたところ、内壁に並べられた直径五十aの光電子増倍菅の半数以上が壊れていた。

2001年11月13日 京都新聞 朝刊より



Last Update 2007.04.06